週刊少年マガジンは講談社が1959年から発行する週刊少年漫画雑誌です。
大事なことなのでもう一度!週刊少年マガジンは【少年漫画】雑誌です。
そんな少年漫画の王道ともいうべき雑誌に連載され人気を集めている「ランウェイで笑って」
この物語は少年漫画では殆ど題材として扱われていない「ファッション」を題材とした【少年漫画】です。
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もう一度言っておきますねw【少年漫画】です!
Contents
「ランウェイで笑って」あらすじ
身長は、158cmから伸びなかった・・・。
藤戸千雪の夢は「パリ・コレ」モデル。モデルとして致命的な低身長ゆえに、周囲は「諦めろ」と言うが、千雪は折れない。
そんなとき、千雪はクラスの貧乏男子・都村育人の諦めきれない夢「ファッションデザイナー」を「無理でしょ」と切ってしまい・・・!?
「叶わない」宣告をされても、それでも一途に夢を追って走る2人の物語。
NONONONO!
「ランウェイで笑って」を読んで
しつこく言いますが「ランウェイで笑って」は少年漫画です。
ヒロインは千雪という少女で第一話にもこれは「藤戸千雪がトップモデルに至るまでの物語」と書かれていますが、この物語のもう一人の主役は育人です。
「都村育人がトップデザイナーになるまでの物語」なのです。

育人は困難に立ち向かいます。
兄妹4人を育てるために無理をして過労で倒れ入院している母親。才能のある妹たちを進学させたい、そのためには自分の夢を諦めざるをえない状況でもやはり「デザイナーになりたい」という強い思いに助けられ、数々の困難に立ち向かっていきます。
少年漫画の王道です。
そして過労で倒れた母を見ているからこそ、ファッション業界の過重労働が許せない育人。
細かい描写まで丁寧に描かれています。
繰り返し「少年漫画です!」とお伝えしていることに加えて、この作品はファッションという皮を被ったスポ根ものである、と言いたいと思います。
もちろん、描かれているファッションの世界はスポーツではないけれど、何度も何度もチャレンジし、常に壁に立ち向かっていき、時にくじけそうになりながらも再度立ち上がり、そして努力の末にひとつずつステップが上がっていくことを勝利と言っていいならば、この物語はまさしく、少年漫画でかつスポ根漫画だと言っても良いと思うのです。
この物語の主人公は、キッズ出身のファッションモデルの千雪と、ファッションデザイナーを目指す育人です。そして二人を取り巻く同世代の人々は友人であり、ライバルであり、その彼らをさらに取り巻く年長者たちはコーチや監督として、前途有望な若い主役たち(なんて書くと、自分がめっきり年寄りに思えてきて、ちょっとカナシイ・・・)を見守り導く、そんな彼らの群像劇――ほら、見事にスポ根ものの構図になっていると思いませんか?
少年漫画の主人公は大きく2パターンに分かれるかと思います。
ひとつは世の中の不幸を全部背負っているかのような暗さを内に秘め、自分に降りかかる火の粉を払いながら運命とやらに立ち向かっていく、いわば「ケンシロウ」タイプ。
もうひとつは、苦境にあっても底抜けに明るく、様々な苦難に遭いながらも、運命を味方にし、周囲を味方にして乗り切っていける、いわば「悟空」タイプ。
この『ランウェイで笑って』の主人公の片割れである育人は、どちらかといえば後者。
父を早くに亡くし、母の手で妹3人とともに育てられ、放課後はバイトと家事に追われるため、部活動もしない、友人と遊ぶ余裕もない高校生(ストーリー冒頭時)。
地味で目立たず、クラスメートから名前も憶えられていない生徒ですが、これもまた天賦の才というか、全くの独学でパターン(型紙)を作ることに長けた裁縫の才能に恵まれており、裁縫を通して友情を育み、時に競い、時に恋愛(のようなもの)のくすぐったさを覚えながら、苦境を乗り越えていきます。
一方、もう一人の主人公、千雪は父がモデル事務所を経営し、自身も小学生のころからファッション誌のモデルを務めてきた恵まれた華やか女子。
しかし、育人に「貧乏」という障害があるように、千雪にもまた、低身長というモデルとしては致命的な欠点が大きな壁となっています。
ですが千雪の生まれ持った屈強なメンタルは、常にポジティブシンキングで千雪を前へ前へと進ませます。幼い頃には群を抜いて高かった身長が伸び止まった千雪は、実はすでに人生の大きな挫折を味わっており、それでも、仕事を選ばなければ、今で言えば、藤田ニコルちゃんなどのようにファッション誌のモデルから芸能人になって、という道が十分に開けたくらいには恵まれています。
しかし千雪の目標はただひとつ、パリコレ。世界中のトップモデルがしのぎを削る中、本当に一握りの人だけが出場できるモードコレクションの舞台しか千雪は見ていません。
このふたりが偶々高3で同じクラスになり、ささいなきっかけで話すことになり、そこから二人の夢が繋がり、物語が始まるわけですが、少女漫画ならまずは一気に恋愛に発展しつつもファッション業界でふたりで頑張るという展開になるところが、ここは少年スポ根ファッション漫画(!)の主人公ふたりですから、何をおいてもファッション業界で上を目指すことが第一なのです。
作る人と着る人、ふたりの目標は世界=パリコレですが、そこはスポーツ馬鹿ならぬファッション馬鹿な主人公たち、「自分が連れて行ってあげるんじゃない、一緒に行くんだ!」と目標に向かって、自分だけが闘志を燃やすのではなく、相手にも根性を要求する熱情がなんともたまりません。
また、時には画面的な構成にも、スポ根めいた意識が表されているように感じられます。
たとえば、主人公の育人やその周囲のデザイナーやパタンナー(型紙を作る人)たちが、ハサミを手にして構えるポーズなど、時に、まるでラケットやバットを持ち、スイングするかのようです。
裁縫ですからそんな大きく振りかぶって、などの大げさな動きはもちろん必要ありませんが、そこは画面の華やかさというものでしょうし、漫画としての画面の派手さを見せるというだけでなく、育人たちのデザインへの意気込みがいかに強いものかを表現しているのでしょう。
そしてこの作品では、裁縫という、旧態的な考え方では女性が家の中で地味~に行うかのような仕事を、男子が情熱を傾けるデザイナーという一職業として印象づけています。
それらに人生を、大げさに言えば命を懸けているかまでをも表現することでより少年漫画らしさが(そしてスポ根ものらしさが)出ていると思います。
ファッショナブルな男子というおしゃれなものを描いているというよりは、苦境を打破し、常に上を目指すといういかにも少年漫画の泥臭さと、いかにも「人生」という渋味が感じられます。
これまでにも、ファッション業界(主に作り手)を舞台にした漫画は多くありますが、恐らくすべてといっていいほど、それらは少女漫画でした。
そこには、デザイナーと言う職業の過酷さや熾烈さよりむしろ、華やかな世界がクローズアップされ、「実は親子でした」などの登場人物に秘された過去や、恋愛に絡む愛憎劇がメインとなっていました。
しかし『ランウェイで笑って』は、個々のキャラクターのバックグラウンドがかなりしっかりと描き込まれていながらも、ストーリーのメインが「裁縫」「デザイン」「服を作る」であることからぶれません。
たとえば主要キャラクターのひとり、綾野遠(あやの・とお)という人物は、パリでストレートチルドレンとして生きていた孤児でした。
それを日本の有名デザイナーに拾われ、服飾の英才教育(ほら、スポ根めいているでしょ?)を施されます。
遠自身の言では「2歳で拾われ、翌日には針を持たされていた」んだそうです。
まるで「虎の穴」デザイナー版です(笑)。(※「虎の穴」とは孤児だったタイガーマスクこと伊達直人が、悪役レスラーにさせられるための訓練を受けた組織。)
遠には遠の、養子ならではの苦悩はあるものの、そこを乗り越える努力もまた、お涙頂戴の愁嘆場ではなく、スポ根的少年漫画の見せ場らしい、一種のマゾヒズム(いや、作家の、あるいは読者視点からのサディズム?)ともとれる追い込み方で、しかし遠は必ずこの壁を自力で打ち砕くか乗り越えるであろうと思わせる努力の姿を見せつけてくれます。

育人のもう一つの武器は、「若き天才」です。
高校生で、縫製を学校で習ったわけでもない、ファッションの知識を学んだわけでもない男子高校生が、トップモデルを目指す意識高い系の女子高生千雪に服を作ったことで、注目をされ始めるわけですが、しかしここで重要なことは、「現役高3男子の服作りの天才」は、1年後には確実に高校を卒業するということです。
人のキャリアというのは不思議なもので、「若くして」「学びもせずに」できるから「天才」と呼ばれることになり、それが年を経て、学び努力してできるようになったことは「当たり前」に受け取られることが往々にしてあります。
しかし経験だけで能力を計れないのが「創造」の世界。育人も、高校を卒業し、先達のデザイナーのもとで実地の経験を積んだのち、スキルが身についたところで改めて、育人の頭の中から生み出されるデザインに本当の天賦の才があるのかどうかを評価されるスタートラインに着いたといえることになるのではないかと思います。
育人は自分と同じようにトップデザイナーを目指す多くの人たちと出会います。
育人を雇ってくれるデザイナーたちも先達とはいえまだまだ道の途中。若い彼らと、彼らが育てた育人は、ゆくゆくは同じリングに上がり、対等に勝負をするようになるであろうと思わせてくれます。
次から次へと育人に対抗するライバルが、皆いつの間にか育人と心を通わせていき、恐らくやがてニューヨーク、ミラノ、そしてありといったブランドコレクションのひのき舞台で対決することを読者に期待させる展開は、まるで、往年のスポ根の名作『リングにかけろ』です。
育人はじめ彼らは、きらびやかなファッションの世界で、はさみとメジャーを武器に、健闘し、破れたくやしさに涙することもあり、好敵手に勝った嬉しさに涙するものあり、の青春がそこにはあるでしょう。
また物語の魅力のひとつとして「ファッション」に関する表現がしっかりと描かれているところです。
華やかなショーの舞台だけではなく、デザイナーが一からどうやって服を作り出しているのか、デザイナーの仕事とは?デザイナー以外の仕事とは?
これまでに漫画になったことはなかったのではないでしょうか。

千雪もただのヒロインではありません。
戦うヒロインです。
どうにもならない自分の身長…身体のハンディは何かを諦めるには充分な理由ですが、千雪は諦めません。
バカにされようが、断られようが「パリコレに出る」という強い想いを捨てずに持っています。
最後にもう一度言いますが、これはファッションの世界を描いた少年漫画であり、そしてファッションという名の創造の格闘技を見せてくれるスポ根漫画です。
通常、ランウェイと呼ばれるモデルが歩く舞台では、モードファッションのショーではモデルは笑ってはいけないとされています。
そのルールに反することを言っているこの作品のタイトル、『ランウェイで笑って』は、闘い抜くカタルシスを感じたいという方には何よりの、勝利の笑みを最後に見せてくれるスポ根漫画だと思います。
ストーリー
画力
魅力
笑い
シリアス
今、一番「読んでいないといけない漫画」かもしれません。
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