何かを気にしすぎる人にとってこの漫画は共感できるものだと思います。
ただその共感がリアルすぎて「痛み」になるのか自分だけではないという「安心」になるのか気になるところです。
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「マンガ大賞2018」第3位。実写ドラマ化、といま話題の作品。
実写ドラマはTBSで2019年7月19日スタートしました。
凪役は黒木華、慎二役は高橋一生、ゴン役は中村倫也となっています。
ゴン役の中村倫也が「ハマり役だ」と言われています!
「凪のお暇」あらすじ
場の空気を読みすぎて、他人にあわせて無理した結果、過呼吸で倒れた大島凪、28歳。
仕事もやめて引っ越して、彼氏からも逃げ出したけど…。
元手100万、人生リセットコメディ!!

「凪のお暇」を読んで
空気を読みすぎる2人
人の顔色をうかがってばかりで、空気を読んで行動しなければならないことに終始気疲れ。唯一の生きがいは“節約”のみという冴えないOL大島凪。
「あれ?息ってどうやってするんだっけ?…
空気は読むものじゃなくて、吸って吐くものだ」
空気を読み過ぎて「わかる~」としか言えなかった凪が自分で息をしていこうと決意して瞬間の言葉がとても良い。
円滑な人間関係を築くためには、自分が空気を読んで損な役回りでも喜んで引き受けなければ。
まるで張り詰めた風船のような日々を過ごしています。
そんな凪の幸せへの切り札は、会社の営業部のエースである我聞慎二と付き合っていること。
ただ慎二との関係は秘密のため、会社の皆はそのことを知りません。
周りのために空気を読んで行動しても、必ずしも報われるわけではないという現実を彼女に突きつけます。
仕事を押し付けてきた人の企画が評価されたり、下手な言い訳で仕事を押し付けられ残業するはめに。
ここでも空気を読んでしまう彼女は、相手を気遣うふりをしつつも笑顔で請け負ってしまいます。
自分さえ我慢すれば丸く収まる。大人しく自分の意見は控えて日々空気を読んで過ごす。
自分を抑え込んで毎日を過ごす彼女に、もどかしい思いを抱く人も多いのではないでしょうか。
嫌なこともはっきり言えればなんて読者は思ってしまいますが、そんな日々はある日突然終わりを告げます。
仕事を押し付けた同僚が忘れていった携帯。
トーク画面には、同僚たちが彼女を揶揄する会話が並んでいます。
中でも止めを刺したのは、凪のようにはなりたくないという言葉。
日常に嫌気が指していた凪は、落ち込みながらもその言葉に同意してしまいます。
ショックを受けた凪が救いを求めたのは、唯一の切り札――慎二。
用事のついでに慎二の顔が見たい、その想いから営業部へと足を運びます。
その最中、営業部の同僚と話していた慎二の口から自分との結婚はありえない、貧乏臭くてけち臭い女は生理的に無理、アッチがいいから付き合ってるだけと散々な評価を下しているのを聞いてしまいます。
ショックの連続に思わず過呼吸になってしまい倒れた凪はこれを機に服や家具ばかりか仕事や人間関係といった何もかもを“断捨離”し、しばし嫌気の指す日々へのお暇を得るのでし

そして傍若無人に思える慎二は実は凪と同じく空気を読むタイプで・・・。
昔から空気を読むことに長けていた慎二。
相手が何を気にして、何を言ってほしいのかが手に取るようにわかります。
慎二は一度凪を実家へ連れてきたことがあります。
きれいな一軒家で素敵な手料理、公務員の父親と笑顔溢れる専業主婦の母親と兄の4人家族は、第三者から見れば理想の家族そのもの。
実際は理想からほど遠く、兄の中学受験失敗を機に崩壊した家庭。
父親は愛人が何人もいて、母親は整形依存症で凪に手料理といって出していたのは買ってきたものでした。
他人の目がある時だけの“理想の家族ごっこ”。
兄と違って両親から関心を持たれなかった慎二が、空気を読まなければならなかった原因はここにあると言えます。
自分の意志のないまま空気を読んだことで相手が喜んでいる様を見て、周りが見ているのが“相手にとっての理想の慎二”であることに悩みを抱えています。
そんな慎二だからこそ、空気を読むことが苦手な凪がいっぱいいっぱいになっている姿を見て、人間らしさを感じ惹かれていくことになるのです。
ストレートヘアが好みだったこともあり、気軽に手を出した慎二。
家庭的で手料理を振る舞い尽くしてくれる凪に、段々と惹かれていきます。
実は凪がひどいくせ毛だったことをある日偶然知ってしまいますが、自分の好みに合わせるためにわざわざストレートにしていたことを知って、その健気さにさらに惚れ直していたようです。
ただ2人とも本当に言いたいことが素直に言えずにすれ違ってしまいます。
巻を追うごとに付き合っていた当時の2人の心のうちが明かされていきますが、本心をちゃんと伝える、ということがどんなに大事なのかを訴えかけてくる作品です。
本当に豊かなものは何なのか?
すれ違いの人間模様だけではなく、凪が会社をやめて”都落ち”した立川の生活がとても豊かです。
もちろん会社をやめたことによって無職となり貯金を切り崩す生活には金品的な豊かさはないのですが、あるもので暮らしその暮らしを楽しむという人間的な豊かさが感じられます。
引っ越し先のマンションで隣の部屋に住む、シングルマザーの白石みすずとその娘うらら。
偶然会ったうららがまるでアフロのような髪を見て、興味津々に触ってもいいか聞いてきます。
頷くと恐る恐る触ってきた彼女は、犬の毛のようにふさふさだと喜んで、会うたびに髪を撫でてくるようになります。
コンプレックスに感じていたくせ毛でしたが、うららに喜んでもらえたことで好きになれたような気がしたのでした。
小学生の頃の記憶を思い返して、なんとかうららに喜んでもらえるものをと考え作り出す凪。
2人の年齢差をも超えた友情にこちらまで心が温まります。
うららと仲良くなったことをきっかけに、母親のみすずとも交流を深めていくようになっていきます。
逆隣の部屋には、イベントオーガナイザーという特殊な職業の安良城ゴンが住んでいます。
長髪とあごひげ、タトゥがある腕とパリピな友人たちといる姿から、最初の頃は凪から敬遠されていました。
ある日ゴンの家に植えられていたゴーヤのことについて教えたことをきっかけに、2人は段々と仲良くなっていきます。
自由で気楽な性格をしているゴンは、目の前にいる人に対しては優しく来るもの拒まず。
男女の垣根も超えて親しくふるまうゴンの人柄に、老若男女問わず惹かれて集まってきます。
見返りを求めず平等に愛を分け与えるゴンですが、誰かと付き合ったとしてもその後の面倒を見ることがない、いわゆる釣った魚に餌をやらないタイプ。
恋人になったとしても目の前にいなければ、その時目の前にいる他の誰かに優先的に優しくします。
だからこそ博愛的な彼の特別な愛を欲してメンヘラ化し廃人となる女性が後を絶たず、付いたあだ名が「メンヘラ製造機」。
凪も例にもれず人としても異性としてもどうしてもゴンに惹かれていくことになるのですが、いまだに未練がある慎二はどう対応していくのでしょうか・・・。
他にもハローワークで出会い宗教系の勧誘を受けるという、衝撃的な出会いをする坂本龍子。
以前とは違いきっぱり断るという成長を見せた凪は、目が覚めた龍子とその後親交が続いていくことになります。
自転車で転倒してケガを負って助けを求めたことで知り合った、スナックのママとその従業員たち。
ママの勧めもあり、スナックでボーイとして勤めることになります。
生来の几帳面さから、細々と店内を整理し完璧な仕事を行う凪。
徐々に店員たちとも打ち解けた凪は会社員時代と違い自宅で気負うことのない女子会を行うことができたことに感動し、さらにバイトに打ち込んでいきます。
「人生は映画」
凪のアパートの上の階に住んでいる吉永さんの言葉です。
その人の人生は、その人が主役・監督・演出すべて担当しているというもの。
故に、その人の生まれながらの思考のクセで人生は味付けられてしまうそうです。
凪は成長することにより、自分に「足りないもの」に気付くことができました。
その「足りないもの」とどうやって向き合っていくか。
これも思考のクセが関わってきます。
凪は潔癖すぎる性格ゆえ「足りないもの」を欠点と認識し、克服へ向かおうとするので凪の映画は成長の物語へと向かっていくわけですが、人によっては欠点の1つや2つくらいと開き直る人もいるでしょうし、視点を変えて欠点を長所のように見立てる強者も存在します。
結局のところ起こる出来事に対して、どう受け止めるかで物語は全く違う方向へ進んでいくのです。
それを選ぶのは自分自身です。
空気が読めてしまう人は、つい他人の求めるものに気が付き、他人の感性も考慮して無難な答えを選んでしまいますが、それはもったいないことかもしれません。
そんな風にして凪は会社に勤めていただけでは知り合うことができなかった多くの個性的な人たちと出会い、交流していくことになります。
人を見かけや噂で判断してはいけないという当たり前のことすらできていなかった自分を反省し成長していく凪の姿に勇気づけられる人もいるのではないでしょうか。
慎二の背景や関係もまだまだ一波乱も二波乱もありそうでこの先の展開がとても楽しみです。

そしてこの作品のもう一つの魅力は凪たちが送るシンプルライフです。
作品の合間に出てくるレシピや生活の知恵、これが結構いいんです。
土鍋丸ごと茶わん蒸しとか土鍋丸ごとプリンとかマネしたくなるような簡単で美味しそうなレシピが登場します。
決して難しいものではなくて、ゴンさんがお勧めしていたミルキーの飴やキャラメルを食べながらコーヒー飲むとか、すぐに実践できるようなものもあります。
自分の好きなフレーバーの飴で試すのもいいですよね。
本当にちょっとした工夫で、毎日を豊に過ごすことができるんだなと教えてもらいました。
また凪のきちんとした生活ぶりを見ていると、自分もきちんと生活したくなるような、そんなモチベーションを与えてくれる作品でもあります。
ストーリー
画力
魅力
笑い
シリアス
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