「はじめの一歩」という漫画を知っていますか?
愚問ですね。
日本で一、ニを争うほど有名なあのボクシング漫画です。
作者はもちろん森川ジョージ先生。
はじめの一歩を書くにあたって、森川先生は何度も何度もボクシングジムに足を運び取材をした話は有名です。
時にはボクサーの減量に密着したり、実際に話を聞いたりし、ボクサーの気持ちを深く理解しようと努めたそうです。
雑誌でも森川先生と世界チャンピオンの対談の様子などを読めることがあります。
森川先生のボクシングに対する情熱、知見の深さに尊敬の念を抱きます。
そういった取材の深さから描かれる、減量の辛さや生活苦など、ボクサーの闇の部分も丁寧に描かれているのもはじめの一歩の魅力です。
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「はじめの一歩」あらすじ
いじめられっ子だった幕之内一歩はひょんなことからボクシングに出会い、熱中していく。
一歩は『強いってどういうことだろう?』という素朴な疑問を抱えながら、持ち前の頑張りで過酷な練習に耐え抜き、強くなっていく。
数多の強敵との死闘を勝ち抜き、国内屈指のハードパンチを持つ日本王者となった一歩。その次なる目標は遥かなる世界王者への道!
限りなく熱く純粋な一歩のさらなる挑戦が始まった!!ひたむき少年、幕之内一歩登場!!
“強い”ってどんなんだろう!?
ボクも強くなりたい!!
ドジでいじめられっ子の高校生幕之内一歩。
ボクサー、鷹村との出会いは、一歩の拳にひそむダイナマイトパンチを呼び起こした!!
プロボクサーへの夢を抱いた一歩は、鴨川ジムの入門テストに挑戦(チャレンジ)するが!?
「はじめの一歩」を読んで
「釣り船、幕の内」の一人息子として育った一歩。
母子家庭の影響か、少し気の弱い所がある心優しい少年です。
そんな一歩は、クラスメイトの不良達にターゲットにされ、高校ではいじめにあってしまいます。
自分を変えたい、こんな自分は嫌だと思い始めていた時にボクシングと出会いました。
いじめられっ子の少年が、全日本新人王、日本タイトルを獲り、世界へ羽ばたいていく。
単なるボクサーの成長を描いた漫画というよりは、一人の男の成長を描いた漫画といえるかもしれません。
愚直なまでの真面目さ
一歩のボクシングを始めたきっかけは、鴨川ジムの鷹村守との出会いでした。
いじめられていたところを助けられたのですが、やり返せずにウジウジとする一歩に対して鷹村はボクシングをするように勧めたのです。
そして、その条件として提示したのが、落ちてくる葉っぱを10枚取るというものでした。
一日中、葉っぱを取るために左ジャブを磨く一歩。
見事、葉っぱを取り鴨川ジムへの入門となるのでした。
一歩は、この時生まれて初めて目標を持ち、努力をしたのではないかと思います。
実際の左ジャブは、簡単なように見えてとても難しいパンチです。
また、左ジャブのみの練習というのはとても飽きやすく忍耐が必要な練習です。
慣れていないと、腕に乳酸がたまり、すぐにパンパンになってしまうのです。
たいていの初心者は、ここで脱落します。
漫画とはいえ、愚直にこの左ジャブの練習だけを続けた一歩。
並の精神力ではありません。
もしかしたら、この先の一歩の成功はこの愚直なまでの真面目さ、勤勉さにあったのではないでしょうか。
ボクシングというのはとても危険で激しいスポーツです。
ボクシング=不良のイメージがある人が多いとは思いますが、実際は違います。
トレーナーの言うことに真摯に耳を傾け、地味で同じようなメニューを3分おきに永遠と続ける。
途方もない精神力と努力量を必要とします。
真面目さと根性がなければ続けられないスポーツです。
一歩の真面目さはとてもボクシングに向いているのではないでしょうか。
ライバルの存在
作品を通して常に出てくるのが、ライバルの宮田一郎です。
宮田は、いじめられっ子だった一歩に初めてできた友達ともいえるかもしれません。
この宮田の存在が、一歩を急速にボクシングの世界にのめり込ませていきます。

スポーツ界においてライバルという存在はとても重要だと思います。
名選手の近くには、必ずライバルと呼べる存在があります。
往年の漫画を例にとってみましょう。
矢吹丈と力石徹
大空翼と若林源三
桜木花道と流川楓
この3つに共通するのは、お互いが強烈に意識し合うと同時に、しっかりと自分自身の成長に向き合うところです。
だからこそ、読者は主人公の成長を見守ると同時に、ライバルの存在も楽しめたのではないでしょうか。
また、二人の関係に自分の青春を投影したり、置き換えたりすることもあるかもしれません。
ライバルキャラが立っているからこそ、自分は力石の方が好きだなどと、作品により深くのめり込めたのではないかと思います。
一方、当然リアルのスポーツでもライバルの存在というのは多く存在します。
イチローと野茂
本田圭佑と中村俊輔
若貴兄弟と曙
このように同じ時代に優れたライバルがいるというのは、アスリートの宿命であり、成長を促していきます。
前述したように、一歩もそうだったように思います。
憧れから友達へ。そしてライバルへ。
いつか彼と同じリングに立ちたいという一歩の強いモチベーションが、鴨川会長の厳しい練習に耐え技術を習得し、本物のアスリートへと変貌させていったのだと思います。
日本タイトルへ
一歩は、日本チャンプの伊達英二に挑戦します。
壮絶な試合の中、最後は伊達英二のハートブレイクショットの前に一歩は初の KO 負けを喫します。
試合前に、伊達が一歩に言ったセリフが興味深いですね。
「お前の拳は軽いんだよ。」

この言葉の意味を、一歩は試合後に知ることとなります。
伊達英二が背負っていたもの。
一歩が背負っていたもの。
何が違い、何が勝敗を分けたのか。
私が思うには、伊達英二が背負っていたものは家族です。
奥さんがいて、子供がいて…、それが伊達英二の全てなのです。
日本チャンプとしてのプライド。
残り少ない現役生活。
そして、家族。
人生を背負って、伊達英二はリングに立っていたのです。
それが、拳に宿っていたのです。
一方で、一歩はボクシングが好き、絶対に試合に勝ちたい。
その気持ちは伊達にも負けていなかったと思います。
しかし、それだけでは伊達に勝てなかった。
一歩はスポーツという名のリングに立っていたのだと思います。
伊達は人生というリングに立っていたのだと思います。
その差だったのではないでしょうか。
実力は互角。
いや、もしかしたら若さと勢いがあった分、一歩に分があったのかもしれません。
しかし、最期は拳に宿るもの、背中に背負うものの大きさが勝敗を分けたのだと思います。
一歩の、初の日本タイトルマッチは手に汗握る一方で、色々なことを考えさせられました。
強さとは何か
強いってなんですか?
こう問われたら、あなたはどう答えますか?

腕力、技術、頭脳、身体能力の高さ等々…。
人によって、様々な強さがあると思います。
はじめの一歩を通して描かれている強さというのは、決して試合に勝つ等のボクサー的要素の強さではないということです。
あのスーパーチャンピオン鷹村守でさえ、試合前は弱さを見せます。
減量に負けそうになる鷹村、ブライアンホークに負けそうになる鷹村。
しかし、それでも鷹村守はいつも勝ってきました。
なぜか。
それは会長との絆があったからです。
決して、一人で戦っているわけではないと気づいていたからです。
会長を男にしたい、会長のボクシングの素晴らしさを世界に証明したい。
その強い気持ちです。
それが、鷹村守の強さの秘密だと思います。

鷹村守を見ていると、「信じる強さ」というものを感じます。
会長や仲間、そして己が通ってきた道を信じぬく。
だからこそ倒れないで、勝ち続けられるのだと思います。
自分を信じるというのは簡単なようでいて、とても難しいものです。
鷹村守を通して、強さとは何か。
自分なりのテーマを持って読み進めるのも面白いと思います。
まとめ
はじめの一歩は、一貫して努力することの尊さを描いた漫画だと思います。
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「努力した者が全て報われるとは限らん。 しかし、成功した者は皆すべからく努力しておる。」(鴨川会長)
才能があるだけでは勝てない。
むしろ努力する才能の方が大切なのだと、鴨川会長を通して教えられます。
努力や勤勉さ、そして気持ちの強さ。
ボクサーにとって必要な要素というのは、多様化して疲弊しきっている現代社会において、最も必要とされる要素なのかもしれませんね。
多くの人に勇気と感動を与え続ける、はじめの一歩。
ぜひ、ご一読ください。
ストーリー
画力
魅力
笑い
シリアス
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