「HUNTER × HUNTER」ってまだ連載してるの知ってますか?
知ってますよね。
1998年(平成10年)より連載が開始され、今現在少年ジャンプの連載陣の中でONEPIECEに次ぐ長期連載をしている漫画です。
しかし既刊は36巻。(ONEPIECEは既刊95巻)
少ない理由は、休載が多いからです。
連載再開を待っている間に少年たちは青年になってしまってますよ!
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「HUNTER × HUNTER」あらすじ
父と同じハンターになるため、そして父に会うため、ゴンの旅が始まった。
同じようにハンターになるため試験を受ける、レオリオ・クラピカ・キルアと共に、次々と難関を突破していくが…!?
「HUNTER × HUNTER」キメラ=アント編あらすじ
モンスターや財宝など、入手困難で貴重なアイテムの収集に生涯をかけるハンター達。
その資格を得るには、数十万分の1ともいわれる厳しい試験を突破しなければなりません。
そうした超人的能力を有するハンターの中でも、卓越した能力に秀でた父を持つゴン・フリークス。
彼は未だ見ぬ父親に憧れ、自らもハンターを目指します。
仲間達と共に研鑽を積み、ハンター試験に合格したゴンは数々の困難に遭遇しながらも、それを乗り越え成長していきます。
そんな中、謎の生物により、次々と人間が襲われる事件が起こりました。
その生物とは、蟻の怪物キメラアントだったのです。
ここに人類の存亡を賭けた、ハンターとキメラアントとの壮絶な戦いの火蓋が落とされます。
「HUNTER × HUNTER」を読んで
「HUNTER × HUNTER」の中のキメラ=アント編、18巻~30巻をピックアップ!
予兆
ヨルビアン大陸のバルサ諸島の南端に一体の生物が打ち上げられました。
その生物は酷い損傷を負っており、回復するためには大量の食糧を必要としていました。
その生物こそ、キメラアントの女王蟻だったのです。
ある日、クルトという男の子が6歳の妹レイナと魚を捕りに出かけると、その帰り道に不運にもキメラアントに出くわします。
ふたりとも女王蟻の餌となり、彼女は人間の味の虜になりました。
こうして、夥しい数の人類を餌にした女王蟻は、生態系の頂点に立つキメラアントの王メルエムを生むのでした。
恐るべし王の力
キメラアントの王メルエムは、母たる女王蟻の腹を引き裂いて生誕しました。
実の母蟻を惨殺しながら生まれた王は、気にいらぬ部下を次々と殺めていきます。
その傍若無人ぶりと圧倒的な殺傷能力は、一瞬にして配下を畏怖させました。
また、メルエムは桁外れの戦闘力だけでなく、頭脳においても突出しておりました。
その証拠にルールブックを読んだ程度で、将棋・囲碁・チェスなどのチャンピオン達を圧倒します。
そして、特筆すべきは、餌として食べた相手の能力を自らのものとして使用できることです。
つまり、ただでさえ強いのに、餌を食べれば食べるほど強くなっていくわけです。
これでは、手に負えません。
コムギとの邂逅
メルエムは、最後に残された室内遊戯の軍儀をたしなみます。
その相手が、メルエムにとっての運命の人コムギだったのです。
目が見えないコムギですが、軍儀においては無敗の世界王者でした。
コムギを倒すのは時間の問題と高を括っていたメルエムでしたが、何局指しても勝てません。
対局を重ねるうちに、コムギの軍儀にかける真摯な思いを知り、王の心が徐々に変容していきます。
人間の中にも生かすべき価値がある者がいることを知るのでした。
ネテロvs.メルエム
ハンター協会の会長にして人類最強のネテロは、メルエムの腹心の部下を一目見て、その恐るべき力を感じ取りました。
部下でもそれほどまでの強さなのですから、王の力たるや想像を絶します。
老境に差し掛かったネテロは全盛時代の半分の実力もないことを自覚しており、往年の力を取り戻すべく、ひとり牙を研いでいました。
そして、ハンター達とともに、キメラアントの根城に乗り込みます。
メルエムを部下と分断することに成功したネテロは、人類の存亡をかけた戦いに挑みました。
ところが、メルエムはネテロとの戦いを拒否します。
「なぜ戦う?其の方に勝ち目はない。死に急ぐことはあるまい」
ネテロが只者ではないことを瞬時に見破ったメルエム。
殺すには惜しい傑物であると感じ、降伏を促します。
人間の支配する理不尽な世界を壊した後、平等とはいえぬまでも差の無い世界を与えることを約束して。
しかし、ネテロは蟻と人との狭間で揺れるメルエムに問答無用とばかり、奥義“百式観音”をもって先制攻撃を仕掛けます。
直撃したにもかかわらず、メルエムは立ち上がり「いい技だ。太刀筋が見えぬ」と言うと、再びネテロと論を交わすため座して動きません。
メルエムの底知れぬ力に脅威を抱きながらも、ネテロは言葉ではなく拳をもって向かいます。

次々と“百式観音”の奥義を繰り出し、王メルエムを圧倒します。
「感謝するぜ!お前と出会えたこれまでの全てに!!!」
チャレンジャーとして戦える僥倖に、ネテロの技は冴えわたります。
攻撃にさらされながらも、王は自らに芽生える感情に気がつくのです。
それは、敵への惜しみ無き賞賛でした。
生態系の頂点に立つ王をもってしても、両の掌を合わせ攻撃の拠点とする所作のスピードを上回ることができません。
その神速の動きを修得するためには、永劫の時の中で狂気にすら近い感情に身を委ね、その所作のみに没頭しなければ到達できぬことをメルエムは見てとったのです。
だが、強烈な打撃の連打を受け続けたにもかかわらず、メルエムは無傷でした。
それほどまでに、キメラアントの王の体は硬すぎるのです。
一転して、メルエムは攻撃に移ります。
正確無比の最善手を繰り出し続けるネテロに対し、笑みをもってその神速の技を捌き反撃する王。
一瞬の隙が、ネテロにとっては命取りになります。
途方もない数の打撃を受け、さすがの王も鈍い痛みを感じ始めました。
しかし、ついにネテロの右足が切断されてしまいます。
万事休したと思った瞬間、ネテロは驚異の精神力と身体操作で傷口を塞いでしまいました。
その姿に驚きを隠せぬメルエムが何よりも感嘆させられたのは、片足を失ってなお衰えぬ闘志でした。
再び対峙する両雄。
寸毫の間に千にも及ぶ拳のやり取りを交わした後、メルエムの予告したとおりネテロの左腕はもぎ取られてしまいます。
ネテロの人智を超えた攻撃を完璧に防ぎ、その鉄壁の防御を切り崩すことができたのは、コムギとの対局の数々により予知のごとき先見を可能にしたからでした。
さすがに勝負あったとメルエムが確信したその刹那、“百式観音”究極の奥義「零の掌」が炸裂したのです。
“祈りとは心の所作。たとえ掌を合わせなくても心が正しく形を成せば想いとなり、想いこそが実を結ぶ”という精神世界を具現化したものであり、ネテロの全オーラを眩いばかりの光弾に変えて撃つ無慈悲の咆哮。
その絶対不可避の技こそが、「零の掌」だったのです。
大地に風穴が空き、土煙が舞う中、「まさに個の極致。素晴らしい一撃であった」という言葉とともに現れし王メルエム。
おそらく、人類が到達できる究極の境地から放たれし一撃でも斃せぬ王の前に、ネテロも顔色を失います。
しかし、ネテロには切り札があったのです。
それは、ネテロの心臓の鼓動が止まった瞬間に作動するよう仕掛けられた「貧者の薔薇」と呼ばれる核爆弾でした。
「蟻の王メルエム。お前さんは何にもわかっちゃいねぇよ…人間の底すら無い悪意を…!!」
そう言い放つと、自らの心臓を手刀で穿ち絶命した瞬間、メルエムを爆発が直撃しました。

「地獄があるなら、また会おうぜ」というネテロの今際の言葉とともに…。
最強の王メルエムをもってしても、活火山の火口のごとき爆心地の高熱に曝されれば、ひとたまりもありません。
黒焦げになり手足が吹き飛ぶ王。
しかし、王を救助した配下の必死の献身により一命を取り留めました。
それどころか、配下が自らの肉体を王に捧げたことにより、更なる力を得て完全復活を遂げたのです。
もはや、人類には打つ手がないと思われました。
人類の代表として、キメラアントの王に戦いを挑むネテロ。
もし全盛時代にメルエムと戦ったならば…という思いがしてなりません。
ネテロはメルエムには勝てませんでしたが、その技の凄味、そして、何よりも武術の粋を極めた者だけが有する精神の強さに感嘆させられました。
それにしても、キメラアントの王の体がそこまで硬く、強靭だったとは!
ネテロという人類最強の達人と戦うことにより、分かりやすく伝わったのではないでしょうか。
最後の場面、己が命と引き替えに「貧者の薔薇」という悪魔の一撃をもって、王を葬らんとしたネテロの姿に、言葉では表せない哀しみを抱かずにはいられませんでした。
それは、ネテロとの戦いの中でメルエムが見せた、王としての成長や見識の高さに感銘を受けたからかでしょうか。
あるいは、生きて帰れぬ覚悟を胸に秘め、体内に核兵器を埋め込むまでして事に当たった、老兵の心中に思いを馳せたからかもしれません。
この作品を読んで感じたのは、キメラアントという人類に仇なす怪物よりも、遥かに人間の欲望や醜い心の方が恐ろしいのではないかということです。
それは、「蟻の王メルエム。お前さんは何にもわかっちゃいねぇよ…人間の底すら無い悪意を…!!」というネテロの言葉に凝縮されています。
作中では、「悪意」と書いて“進化”と読ませていました。
これは、果てのない文明や技術の“進化”の根底にあるものが、「悪意」であるということを示唆しているのではないでしょうか。
高度な科学や技術は、使い方によっては「善」なるものをもたらします。
しかし、醜い欲望に支配された人間が扱う以上、所詮、“進化”の終着点は「悪」なのかもしれませんね。
メルエムとコムギ
実は、薔薇には毒があったのです。
たとえ爆死を免れたとしても、薔薇の毒が体内へ迅速に取り込まれ内部を破壊するのです。
そして、この爆弾が悪魔の兵器たる所以は被爆した肉体を介して新たな毒を撒き散らし、次々と被毒者を生み出していくことにありました。
自らの運命を悟ったメルエムは、ただひたすらにコムギと最期の刻を過ごすことだけを望みます。
残された時間がない中、ネテロの部下に連れ去られたコムギをようやく見つけ出しました。

盤を挟んでコムギを見つめるメルエムは、しみじみと感じ入ります。
「余は…何が大事なものかを…何も知らなかったようだ…」
軍儀の対局が始まると、これまでの定石を覆す新手を次々と繰り出す両者。
そして、メルエムとの秘術を尽くした応酬に湧き上がる歓喜。

純粋な心を持つコムギは、素直に己が感動を打ち明けました。
そのコムギの姿にメルエムは覚悟を決め、真実を告白しました。


コムギと出会い、軍儀を通じて心が触れ合うことにより、冷酷非情のメルエムに温かい心が灯っていきます。
人と蟻の間で揺れるメルエムでしたが、毒に侵され余命いくばくもないことを知り、最期をコムギと過ごしたいと思ったのは当然のことなのかもしれません。



しかし、それはメルエムだけではありませんでした。
盲目の少女コムギもまた、メルエムを誰よりも必要としていたのです。
コムギは子ども時代から何の取柄もなく、ずっと家族の厄介者として過ごしてきました。
そんな彼女が、唯一の取柄にして情熱の全てを傾けられるものに出会います。
それこそが、軍儀だったのでした。
メルエムはこれまでのどの対局者よりも手強い相手であり、コムギの潜在能力を次々と開花させていきます。
誰よりも軍儀に愛情を注いできたコムギは、あらん限りの力を振り絞り全力をもって戦える喜びに打ち震えていたのです。
「メルエム様、ワダす…今…とっても幸せです。ワダすはきっと…この日のために生まれてきますた…!」
この言葉は、まさにコムギの心情を雄弁に物語っています。
徐々に弱っていくメルエム。
その様子は、軍儀を打ちながら「コムギ…いるか…?」と尋ねるメルエムの言葉から窺えます。
毒がまわり、もはや目が見なくなっているのでしょう。
死にゆくメルエムは、コムギに手を握って欲しいと懇願します。
その時、コムギは知ったはずです。
メルエムが人ではなく、人外の者であることを…。
しかし、コムギには全く動揺が見られません。
もしかすると、とっくにメルエムが人間でないことを知っていたのかもしれません。
でも、コムギはそんなメルエムを、かけがえのない大切な人だと思い続けていました。
決して美少女とはいえないコムギと蟻の怪物メルエム。
このふたりを見ていると、外見の美しさなどよりも本当に大切なものの存在を我々に語りかけます。
すぐそこに死が訪れたことを悟ったメルエムが、心から言った感謝の言葉。
「コムギ…ありがとう」
それに対するコムギの返事。
「こちらこそ」
シンプルなやり取りの中に、ふたりの思いが伝わって来ます。
もしかすると、この世の中で最も美しい言葉、それは「ありがとう」なのかもしれませんね。
そして、今生の別れにメルエムが紡いだ言葉。
「最後に…名前を…呼んでくれないか…?」
コムギは慈愛に満ちた表情で言います。
「おやすみなさい…メルエム…」
メルエムを膝の上に乗せたコムギは、母性に溢れ、本当に愛しい者を抱きしめる幸福感が体中を優しく包んでいました。
これまでメルエム様と呼んでいたのに、メルエムの最期に敬称を外し「メルエム」と呼んだコムギ。
これは、死を以って真に魂が結ばれ、ふたりの愛が永遠になった証拠です。
「ワダすも、すぐいきますから…」と言わせた場面の表情は心からの感謝、幸福感、慈しみ等に彩られた、見る者全ての魂に安らぎをもたらす、そんな表情だったのではないでしょうか。
生まれてきた意味
女王蟻は、自らの命を奪った息子メルエムの行く末を死の際まで心配していました。
人類にとっては驚異でしかないキメラアントですが、子を想う母の気持ちは人間と何ら変わりません。
その母が、メルエムという名前に込めた思い。
それは、“全てを照らす光”という意味でした。
コムギとの邂逅を果たし、戦闘力だけでなく精神性までも真の王へと成長を遂げたメルエム。
しかし、その境地に到達した時には薔薇毒に侵され、残された時間がありませんでした。
きっとメルエムならば、その名の通り“全てを照らす光”として、地上の生物に平等で暮らしやすい世界を実現できたはずです。
だが、思うのです。
たとえ短い命だったとしても、メルエムは己が生まれた意味、そして自分以外の存在を愛する喜びを知り、幸福に包まれながら逝ったに違いないと。
そう!メルエムは、この世界を統べるためでも生態系の頂に立つためでもなく、ただコムギと出会うために生まれてきたのです。
メルエムとコムギ。
軍儀という無限の宇宙を共に旅することにより、生物という種の壁を越え、魂で結ばれたのです。
~帰郷~
キメラアントの女王から生まれた兵隊蟻は、元の生物の特徴を色濃く残します。
元々、人間だった蟻の中には、人間時代の記憶や名前までも覚えている個体も存在しました。
そんなキメラアント達は王が死んだ後、それぞれのルーツを求めて旅立って行きます。
ロブスターのような形状を持つプロヴーダも、どうやら元は人間だったようですが、あまり記憶が残っていませんでした。
そんな彼は、気の弱いキメラアントの女の子レイナを生まれ故郷に送ります。
レイナは故郷の記憶があるのですが、人間とはかけ離れた外見になってしまったこともあり、怖くて一人では帰れなかったのです。
そんなレイナを勇気づけ、村人達を説得し親の元に帰す助けをしたのが、短気で決して性格が良いとはいえないプロヴーダでした。
故郷の人々の前に姿を現す二人ですが、当然化け物にしか認識されず、蜘蛛の子を散らすように逃げられてしまいます。
プロヴーダはそのリアクションを予期していたため、動じることなく村人達に誠意をもって話しかけ、根気強く事情を打ち明けます。
プロヴーダの説得の甲斐もあり、村人達に何とか信用してもらうことができました。
レイナは意を決して、記憶を頼りにある家を訪ねます。
そこには、魂の抜け殻のようになっていた女性が、亡き子どもたちのためにお供えをしている姿がありました。




人類で最初のキメラアントの被害にあった、兄クルトと妹レイナ。
実は、兄もキメラアントの兵隊として生まれており、メルエムの残虐性について行けず、ハンター軍に降伏しメルエム討伐を陰で支えます。
人間時代から正義感の強いクルトらしいエピソードだと感じました。
そして、妹のレイナはキメラアントとして生まれた後も、人間時代の記憶を色濃く残していました。
他のキメラアント達とは異なり、常に何かに怯え自信なさげに見えます。
おそらく、ずっと兄と一緒に襲われた記憶に苛まれ続けたのでしょう。
レイナが母親と再会を果たすシーンは、涙なしでは見られません。
母親と抱き合い、これまで言葉を発しなかったレイナが堰を切ったように話し出します。
母親が自分を娘だと理解してくれた安堵感と嬉しさから、悲劇の顛末を語るレイナ。
その会話から、兄が妹を命懸けで守ろうとした勇気。
そして、助けようとしてくれた兄の思いにもかかわらず、恐怖のあまり逃げられなかった自分を責め続けた少女の悔恨を我々は知ることになります。
去ろうとするプロヴーダの手を掴むレイナ。
はにかみ屋のレイナが、「ありがとう。食べよ?いっしょにごはん食べよ?」と言うのです。
おそらく、プロヴーダが居なければ、レイナは勇気を出して母に会いにいくことは出来なかったはずです。
それをレイナは分かっているからこそ、一生の恩人に心から感謝しているのです。
レイナの言葉と温もりに、人間の記憶がほとんどないはずのプロヴーダは、目から涙の雫を落とします。
プロヴーダはレイナを送り届けたら、人目を避け一人生きていくつもりでした。
ところが、自分が虐殺してきた人間から思わぬ歓迎を受けたことに加え、あの大人しいレイナから心のこもった感謝を告げられ、自分でも気づかぬうちに人の心が戻ったのではないでしょうか。
人は一人で生きられないという真理。
そして、子を想う母の深い愛情。
人間には底知れぬ悪意だけでなく、善意に溢れた優しさも宿っているという事実。
この「帰郷編」は、こうしたことを我々に教えてくれる温かい物語でした。
ストーリー
画力
魅力
笑い
シリアス
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