いくえみ綾っていつから人気漫画家だったんでしょう・・・。
1979年にデビューということはデビュー40周年!
[itemlink post_id=”29006″]
40年間ずっと最前線で漫画を描いているとどんな景色が見えるんでしょうね。
「あなたのことはそれほど」あらすじ
いくえみ綾が描く、底無しW不倫。
「私はいつかきっと罰があたる」 占い師は、中学生の美都(みつ)にこう言った。
「二番目に好きな人と結婚するのがいい」 医療事務として働く美都は、飲み会の帰り道に想って想って想い続けた初恋の人・有島(ありしま)に再会、男女の仲に。
しかし彼は既婚者で、美都にもすでに優しい夫がいて───。
美都と夫、有島と妻。
四者四様の視線と思惑が交錯する、出口なしのマリッジライフ、待望の第1巻。

「あなたのことはそれほど」を読んで
独特な経緯をたどった離婚
W不倫をしたカップルとその周囲の人の生活を描いた物語。
美都の不倫がばれてから涼太・美都夫妻が離婚に至るまでの経緯は独特なものでした。
麗華の反応は理解できます。夫である光軌の不倫を知って実家に帰るというのは多くの人が納得できる行動ですし、その先に離婚があってもまったくおかしくありませんでした。
しかし、涼太は不倫されたからといって、麗華のように相手と距離を置こうとはしませんでした。むしろ出て行ったのは美都のほうです。涼太は美都のことを不倫も含めて受け入れようとしていました。
2人の人格形成には家庭環境が大きく影響していることが読み取れます。
涼太の母は何もできない人でしたが、父から深く愛されていました。飼っていた鳥のピヨ吉が母の不注意により死んでしまったときでさえ、父は涼太をなぐさめるより先に「おかあさんを責めるな」と母を守っています。そして、母の死後はもぬけの殻のようになってしまいました。
父のこのような姿、また愛されるという1点のみで幸せに生きたであろう母を見て育った涼太が、同じように配偶者を愛そうとするのは不思議なことではありません。美都が浮気をしてもそれを許し、受け入れるのが自然なことだったのでしょう。
美都の母は、涼太の母とは対照的に自立した女性でした。スナックのママとして働き、おそらく美都を女手1つで育ててきたのでしょう。入院の際は友人が駆けつけてくれたり、寄せ書き色紙をプレゼントされたりと、まわりから厚く信頼されていることが伺えます。
その娘である美都もまた自立した女性です。
涼太のような男性であれば、妻が専業主婦になっても歓迎しそうなものです。ですが、美都は結婚後も変わらずフルタイムで働いていると思われます。おそらく涼太に養ってもらうよりも対等な関係を保ちたかったのではないでしょうか。
そんな美都にとって、浮気していることも含めて愛されるのは、まるで相手の保護下におかれるように感じられたことでしょう。脛に傷持つ自分を相手に受け入れてもらうという関係は、相手に頼りたい女性であれば良いですが、美都にとっては居心地の悪いものであったと推測できます。
2組の夫婦が少しずつ壊れていく様子が描かれているんですが、展開は予測不能で、常に先が気になってしまいます…。
メインの登場人物4人のうち3人は、それぞれ悲しい子供時代を過ごしていて、どこか歪んでいて、物語が進んでいくうちにその歪みがどんどん表面化していきます。
普通にそこら辺にいそうなのに、どこか狂気的な部分を持った人物描写が絶妙で「あれ?ホラーだったかな?」と思ってしまうほどにコワイ。
登場人物の過去や苦しさがしっかり描かれているからこそ、「この状況でそう動くのか」と納得したり、驚いたりします。
愛が異常な狂気として表れる
涼太は不倫されたことを含めて美都を愛そうとしました。しかし心の底には、浮気を狡猾に隠し通してくれない美都への恨みがありました。愛と恨みがごちゃごちゃになってしまった結果、有島夫妻に接触したり浮気相手との子を自分の子として育てようとする等の異常な行動となって表れます。
もし涼太が素直に「浮気せずに自分だけを愛して欲しい」と伝えることができていたら、夫婦は離婚せずに済んでいたかもしれません。涼太の行動がエスカレートしなければ、美都にとって涼太は二番目に好きな人のままでいられたのではないでしょうか。
物語の中の涼太の姿からは、このような主張をする姿は想像しづらいかもしれません。でも実は、それに近いシーンが1つだけあります。
それは、家出して母のもとに行った美都を迎えに行ったときです。このとき美都は、スナックで働くために母親のヒョウ柄ワンピースを借りて着ていました。涼太はこの衣装を「この人には似合わない」と発言しています。
美都・美都の母ともに似合っていると感じていたことから、本当に似合っていなかったわけではないでしょう。おそらく、美都がスナックの客から女として見られるのが嫌だったのではないでしょうか。水商売なんて美都には似合わない、そんなことをしないでほしいという独占欲の表れとしての「この人には似合わない」ではないかと考えています。
このときに不倫のことも言及していれば、話の流れは変わっていたでしょう。しかし涼太は美都が家に戻って安心したのか、それ以上の話にはなりませんでした。そして2人は離婚への道を進んでいきます。

不倫している当人たちのやっていることは「最低」なんですが、人物描写が細かいので、どこか彼女たちの気持ちが理解できるような気がしてしまって憎みきれない。
時に重すぎる愛で相手を包み込もうとする涼太と、お互いに自立した関係を望む美都。もともとは仲の良い夫婦であったのに、不倫という1つの出来事をきっかけとしてスタンスの食い違いに直面し、関係が破綻していきました。
この物語では美都の不倫が発端となっていますが、現実の夫婦関係が破綻する原因は他にいくらでも考えられます。夫婦として長く一緒にいることの難しさを考えさせられる作品です。
ストーリー
画力
魅力
笑い
シリアス
[itemlink post_id=”29006″]
「あなたのことはそれほど」を読んだ人におススメ

漫画好きのあなたにはコチラもおすすめです!


